ブラシレスDCモータとは、従来のブラシ付きモータから機械的な接点(ブラシと整流子)を排除し、電子回路で駆動する長寿命かつ高効率なモータです。
摩耗部品がなく長寿命で、精密制御が可能なため、医療機器から産業用ロボットまで幅広く採用されています。
本記事では、ブラシレスDCモータの原理や構造、用途について詳しく解説します。新規開発や自社製品への採用を検討される方は、ぜひ最後までお読みください。
なかでも、FAULHABER(ファウルハーバー)のブラシレスDCモータは、ロボットや半導体製造装置から航空宇宙まで世界中の最先端産業で選ばれています。
コギング(磁気的な引っ掛かり)のない滑らかな回転と、圧倒的な応答速度で装置の性能を底上げする業界高水準の品質を提供しています。
国内での選定や導入、多様なカスタマイズ要求やサポートは、日本総代理店の新光電子にお任せください。
ブラシレスDCモータとは?原理や構造、仕組みや用途を解説
目次
・ブラシ付きDCモータとブラシレスDCモータの比較
● ブラシレスDCモータの特徴
● 構成部品
● 構造的特徴
● 性能面の特徴
● メンテナンス性
● 制御
● FAULHABER(ファウルハーバー)のブラシレスDCモータ
● FAULHABER社について
● FAULHABER(ファウルハーバー)のブラシレスDCモータの種類
・ブラシレスDCサーボモータ4極技術
・ブラシレスDCサーボモータ2極技術 Bシリーズ
・ブラシレスDCサーボモータ2極技術 BHx
・ブラシレスDCサーボモータ4極技術 BX4、BP4
・ブラシレスフラットDCマイクロモータ B-FLATシリーズ
・ブラシレスフラットモータ BXTシリーズ
● FAULHABER(ファウルハーバー)ブラシレスDCモータの特徴
・センサ
・磁石
・耐用期間
・カスタマイズ
・組み合わせ
● FAULHABER(ファウルハーバー)ブラシレスDCモータの採用事例
・医療機器
・FA、ロボティクス、産業機械装置、設備
・航空宇宙産業
● ブラシレスDCモータの選定や相談はFAULHABER(ファウルハーバー)日本総代理店の「新光電子」へ
ブラシレスDCモータとは?ブラシ付きDCモータとの違いを解説
DCモータとは、直流電源を用いて電気エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換する装置です。
磁界の中で電流が流れる導体が力を受ける「フレミングの左手の法則」を動作原理としています。
DCモータは、電流を流すための接点構造の違いにより、大きく「ブラシ付きDCモータ」と「ブラシレスDCモータ」の2種類に分類されます。
それぞれの決定的な違いは、回転力を生み出すための電流切り替えを「機械的に行うか」あるいは「電子的に行うか」という点にあります。
産業用途での選定において重要となる両者の違いを、以下の表に整理しました。
| ブラシレスDCモータ | ブラシ付きDCモータ | |
|---|---|---|
| 回転原理 | 電子回路による電流制御 | ブラシと整流子の接触による機械的制御 |
| 寿命 | 長寿命(軸受の寿命に依存) | 経時劣化あり(ブラシの摩耗による寿命あり) |
| メンテナンス | 不要(メンテナンスフリー) | 必要(定期的に新品へ交換) |
| 電気的ノイズ | 小さい(接点がないためスパークが発生しない) | 大きい(接点でのスパーク発生) |
| 効率・放熱性 | 高い(コイルが固定子の為 ハウジングを伝って熱を逃がしやすい) | 低い(コイルが回転子の為 放熱経路が長く 熱を逃がしにくい) |
| 制御性 | 非常に高い(精密な速度・位置制御が可能) | 高い(ブラシと整流子の接触がある為 ブラシレスより若干劣る) |
| コスト | センサを搭載する為 高め(別途 駆動回路が必要) | 安価(モータ単体で動作可能) |
ブラシレスDCモータのほうが高性能である一方で、導入コストはブラシ付きDCモータの方が費用を抑えられます。
とはいえ、メンテナンスフリーである点や寿命の長さを考慮すると、中長期的に見てブラシレスDCモータを選ばれる方が多いのも事実です。
製品の使用環境や予算を考慮して、どのDCモータを導入するのか総合的に判断する必要があるでしょう。
ブラシレスDCモータの特徴
ブラシレスDCモータは、従来の課題を克服し、産業機器の高性能化を支える重要なコンポーネントです。
ここでは、その技術的特徴を「構成部品」「構造」「性能」「メンテナンス」「制御」の5つの観点から紹介します。
1、構成部品
ブラシレスDCモータを構成する主要な部品は以下の通りです。
これらの部品が連携することで、精密な回転動作が実現します。
- ● ロータ(回転子): 永久磁石(ネオジム磁石やサマリウムコバルト磁石などの希土類磁石)が取り付けられた回転部分。
- ● ステータ(固定子): 電流を流して磁界を発生させるコイル。3相巻線が一般的。
- ● ベアリング(軸受): 回転軸を支える部品。モータの寿命と騒音レベルを決定する重要な要素。
- ● 位置検出センサ: ホールセンサ(ホールIC)などが用いられ、ロータの磁極位置を検知。
- ● 駆動回路(ドライバ): センサからの信号に基づき、回路内のトランジスタ(FET等)をスイッチングし、適切なタイミングでコイルに電流を流す。
ブラシレスDCモータは単体では動作せず、これらの構成部品と駆動回路が一体となった「システム」として最適化されて初めて、その真価を発揮します。
2、構造的特徴
ブラシレスDCモータの最大の特徴は、ロータ(回転子)に永久磁石を使用し、ステータ(固定子)にコイルを配置する構造にあります。
ブラシ付きモータでは、回転するコイルに電流を送るために「ブラシ」と「整流子」が機械的に接触する必要がありました。
しかし、ブラシレスDCモータはこの構造を逆転させています。コイル側を固定し、磁石側を回転させることで、電流供給のための摺動接点(機械的な接触部分)を完全に排除しました。
この「磁石」と「コイル」の配置構造によって、大きく以下の3つのタイプに分類され、特性が異なります。
- ● インナーロータ型
・構造:回転軸の内側に磁石を配置する。
・特徴:ロータ径が小さく慣性モーメントが小さいため、応答性に優れる。
急激な加減速が得意で、俊敏な動作が可能。
・用途:細かい位置決め制御が必要な産業用ロボットや工作機械など。 - ● アウターロータ型
・構造:回転軸の外側に磁石を配置し、覆うように回転する。
・特徴:ロータの慣性(はずみ車効果)が大きく、回転の安定性と高トルク確保に有利。
定速回転が安定しやすく、薄型でも強いトルクを出せる。
・用途:回転ムラを抑えたいファン、ディスク駆動、スペースが限られる高トルク用途など。 - ● ディスクロータ型
・構造:磁石とコイルを平面状に対向させた薄型形状。
・特徴:限られたスペースへの実装が可能。
・用途:厚みを抑えたい精密機器やロボット関節部など。
装置に求められる動作(応答性か、安定性か)と、実装スペースの形状(細長いか、薄いか)を考慮し、最適な構造を持つモータを選定することが設計の第一歩です。
3、性能面の特徴
ブラシレスDCモータは、物理的な接触抵抗がないため、極めて高いエネルギー変換効率を実現します。具体的には以下のような特徴があります。
- ● 高効率 :ブラシと整流子による機械的な摩擦損失や、接触部の電気抵抗(電圧降下)がないため、入力された電力の多くを無駄なく回転力に変換できます。
発熱によるエネルギーロスも最小限に抑えられるため、長時間の駆動でも効率が安定します。 - ● 高トルク:回転速度にかかわらず、低速域から高速域までフラットで高いトルク特性を維持します。
特に「コアレス構造」や「スロットレス構造」を採用したタイプでは、コギング(磁気的な引っ掛かり)がなく、滑らかな回転が得られます。 - ● 低ノイズ:機械的な接触点がないため、摺動音や電気火花(スパーク)が発生しません。静音性が求められる医療機器や精密機器に最適です。
摩耗部品を排したことによるこれらの性能優位性は、信頼性が求められる産業用機器の設計において必須の選択肢となっています。
4、メンテナンス性
ブラシレスDCモータは、実質的にメンテナンスフリーです。
ブラシ付きモータにおける最大の故障要因は「ブラシの摩耗」です。ブラシが摩耗すると導通による絶縁不良を起こし、寿命を迎えます。
一方、ブラシレスDCモータの寿命を決定づける要因は「ベアリング(軸受)」の潤滑寿命のみとなります。
そのため、数千~万時間以上の連続運転が可能であり、メンテナンスが困難な場所や、ダウンタイムが許されない産業ラインでの使用において圧倒的な優位性を持っています。
5、駆動性
ブラシレスDCモータの回転には、専用の駆動回路(ドライバ)が不可欠です。
コイルへの通電タイミングを制御するために、回転子の位置を常に検出する必要があります。この位置検出には主に以下の2つの方式が採用されます。
- ● センサ付き方式
・仕組み:ホールセンサ(磁気センサ)やエンコーダを搭載し、回転子の位置を直接かつ物理的に検出する。
・特性 : 停止時や低速時でも正確な位置を把握できるため、始動から安定した駆動が可能。ただし、センサの分だけ配線やスペース、コストが増加する。
- ● センサレス方式
・仕組み: モータ回転中に発生する「逆起電力(誘起電圧)」を電気的に読み取り、回転子の位置を推定する。
・特性 : センサ部品や配線が不要なため小型・低コスト化に有利。
ただし、逆起電力が発生しない停止時や極低速時の制御が難しく、高度な駆動技術が必要。
駆動回路が必須となるため、コストや実装スペース、求められる制御精度(特に低速域)のバランスを見極め、用途に最適な検出方式を選定することがシステム設計の要となります。
FAULHABER(ファウルハーバー)のブラシレスDCモータ
産業用小型モータの分野において、世界的な技術リーダーであるFAULHABER(ファウルハーバー)社のブラシレスDCモータについて詳しく解説します。
同社の製品は、一般的なモータとは一線を画す独自の構造技術により、さらなる高性能を実現しています。
FAULHABER社について
FAULHABER社は、1958年にフリッツ・ファウルハーバー博士が「斜め巻線(Faulhaber Winding)」技術を発明して以来、コアレスモータ技術のリーディングカンパニーとして業界を牽引してきました。この「斜め巻線」技術を用いた自己支持型コイルは、鉄心(コア)を持たないため、軽量かつコンパクトでありながら高出力を発揮します。
この技術は、現在のFAULHABERのブラシレスDCモータのスロットレス設計の基礎となっており、産業界に革命をもたらしました。
鉄心がないことで、コギングトルク(回転の脈動)が原理的に発生せず、極めて滑らかな回転制御と正確なポジショニングを可能にしています。
FAULHABERのブラシレスDCモータは、用途に応じて最適化された多彩なシリーズを展開しています。
それぞれの技術的特徴は以下の通りです。
FAULHABERのブラシレスDCモータの設計は頻繁に過負荷が発生するヘビーデューティサーボの用途や長寿命運転を必要とする連続デューティ用途に最適です。
センサレスのオプションもあり、スペースが極限まで限られた用途にも対応可能です。
このシリーズのモータは、高速~超高速動作用に設計されています。用途により速度を最大化する BHS バージョン、トルクを最大化する BHT バージョンから選ぶことができます。
BHSバージョンは最大100,000min-1近い高速性を実現し、BHTバージョンは高い瞬間的トルク(>30mNm)を提供します。
部品点数が極めて少なく、接着されたコンポーネントが無い堅牢構造なので、高温や高衝撃性、振動性負荷など、厳しい環境下での用途に最適です。
BP4シリーズは、革新的なコイル技術により最大91%という非常に高い効率を実現しており、動的な起動・停止運転に適しています。
他社製フラットブラシレスモータを大きく凌ぐ効率を実現し、ロータの慣性を発揮するバックヨークは低トルクリップル並びに高精度連続スピード制御が必要な用途に適しています。
上記以外にも外径5㎜以下の超小型センサ―レスタイプのブラシレスDCサーボモータB-Microシリーズも取り揃えています。
ここでは、FAULHABER製品が持つ独自の技術的優位性をさらに掘り下げて解説します。
さらに、多くのモデルで高精度な「アナログ(リニア)ホールセンサ」をオプションとして選択可能です。これにより、FAULHABER製モーションコントローラと組み合わせることで高分解能エンコーダを追加することなく、極めて高い分解能での位置制御や滑らかな低速回転が可能になります。
これにより、小型でありながら強力な磁束密度を確保し、過酷な環境温度下でも減磁しにくい安定した性能を発揮します。
一方で、その構造に機械的接触のないブラシレスDCモータの寿命は、主に「ベアリング(軸受)」の寿命によってのみ決定されます。
特に、FAULHABERのブラシレス DCモータでは、直径6mm以上のすべてのモデルに高精度な予圧処理済みボールベアリングを採用しています。
そのため、データシート通りの使用条件下であれば、従来のブラシ付きモータの数倍に及ぶ長寿命を実現します。
FAULHABERはお客様の特定の課題解決に向けたカスタマイズを得意としています。対応可能なものは以下のとおりです。
- ● 定格電圧の種類
- ● 接続ケーブル(PTFEとPVC)及びコネクタ
- ● シャフト長やエンドシャフトの変更
- ● フラット用、ギア用、プーリ用などシャフトの特徴とピニオンの形状の変更
- ● 温度の高範囲対応
- ● 真空適合性(例:10^-5 Pa)
- ● 高速、高負荷用途の対応
- ● 高衝撃、高振動用への変更
- ● オートクレーブへの対応(蒸気滅菌処理への耐性強化)
- ● 標準の電気的または機械的な公差よりも厳しくしたカスタムモータ設計
特に「オートクレーブ対応」は、134°C、高湿度、高圧環境下での滅菌サイクルに耐える設計であり、医療機器分野で高く評価されています。
- ● 精密ギアヘッド(遊星ギアヘッド、平歯車ギアヘッド、ゼロバックラッシュギアヘッド)
- ● 高分解能エンコーダ(インクリメンタル、アブソリュート)
- ● 高パフォーマンスのドライブ・エレクトロニクス(スピード・コントローラ、モーション・コントローラ)
- ● ドライブ電子回路一体型(モーション及びスピードコントロール)
これらの豊富なコンポーネントを自社開発しているため、単なるモータ部品としてではなく、お客様の仕様に最適化された検証済みのドライブシステムとしてワンストップで提供可能です。
高効率、長寿命、精密制御という特性を持つFAULHABERのブラシレスDCモータは、
精密装置・精密機械や特殊な環境で使用される装置に多く採用されています。
特に、オートクレーブ滅菌(134°Cの蒸気滅菌)に耐えうる耐久性と、手術中の微細な操作を可能にする低振動・低ノイズ特性、そしてバッテリ駆動時間を延ばす高効率性が評価されています。
インスリンポンプや手術ロボットなど、極小サイズかつ高信頼性が求められる用途でも活躍しています。
限られたスペースに収まる薄型設計でありながら、アームの保持や重量物の搬送に必要な強力なトルクを発揮します。
また、エンコーダと組み合わせた高精度な位置決め制御により、半導体製造装置などのナノメートル単位の制御が必要な現場でも不可欠な存在です。
真空オプションが豊富であることや、打ち上げ時の激しい衝撃・振動にも実績ある堅牢な構造(BX4/BP4シリーズなど、そして搭載重量を最小限に抑えるための軽量・高出力密度が採用の決め手となっています。
カメラジンバルの安定化装置など、軽量かつ高応答性が求められる用途に最適です。
本記事では、ブラシレスDCモータの原理や構造について解説しました。
ブラシレスDCモータは、摩耗部品を排除したことで長寿命・高効率・静音性を実現し、現代の産業機器に不可欠な動力源となっています。
特にFAULHABERのスロットレス・コアレス技術は、コギングのない滑らかな回転と圧倒的な小型高出力を提供し、医療・ロボット・航空宇宙といった最先端分野での技術革新を支えています。
自社製品の小型化や高性能化を目指す開発者の方は、ぜひこの技術の導入を検討してみてください。
ただし、ブラシレスDCモータは構造や制御方式によって特性が大きく異なるため、用途に合わせた最適な選定には専門的な知識が必要です。
特に、FAULHABERのような高性能モータを最大限に活用するためには、ギアヘッドやエンコーダ、コントローラを含めたシステム全体での最適化が欠かせません。
新光電子は、FAULHABERの日本総代理店として、単なる製品販売にとどまらず、技術的なコンサルティングからカスタマイズの相談、試作・量産のサポートまで一貫して提供しています。
「小型化、軽量化したい」「既存のモータではスペックが足りない」「特殊環境下で使用したい」といった課題をお持ちの方は、ぜひ新光電子へご相談ください。