フライング・プローブ・システム用の信頼性の高い駆動ソリューション
- Reliable Drive Solution for Flying Probe Systems -

電子回路の自動試験設備において、従来の針床アダプタを使用する位置調整がいよいよ難しくなってきています。高い集積密度と短くなる製品のライフサイクルにより、アダプタの初期投資額を回収することが困難になっています。それに代わる方法として、試験プローブを様々な試験パッドに移動する、いわゆるフライング・プローブ・システムがあります。プローブの高い柔軟性により、試作機の自動テスト、製品の市場投入段階において、針床アダプタにかかる費用が発生せず、また、比較的少ロット多品種な製品における対応を可能にしました。フライング・プローブの開発の進展に貢献した要素の1つは高い機能性とパワーを持ち、また極めて狭いスペースでの動的応答性を発揮することのできる最先端のDCサーボモータでした。


数百ものコネクタやコンポーネントが取り付けられている大規模で複雑なバックプレーンの小型シリーズや試作品を低コストで電気的に行う試験は、技術的に非常に大きな難題です。Hamburgに本社のあるScorpion Technologies社は、最新世代のフライング・プローブ・テスターでこの難題に挑戦しました。Flying Scorpionは、精密な試験を高速で実行できる多機能バックプレーン試験システムです。同じメーカーのCAD変換プログラムと組み合わせて、高密度コネクタを使用することにより非常に大きなバックプレーンをCADデータが利用できるようになったその日から自動的に試験を行うこともできます。

フレキシブルな試験オプション:両面試験、3D試験、多機能試験

このフレキシブルな試験システムの基本的な動作モードは分かりやすいものです。まず、平面駆動装置は可動式ジョイスティック・プローブを試験パット上の適切な位置に配置します。いわゆるシャトルは、構成に応じて2~5本のプローブを収容しています。
試験はバックプレーンの表面と裏面の両面で行えます。高度な3軸位置決めシステムにより、試験針または試験カップを3軸すべてに沿って自由に移動させることが可能になります。さらにアクセス不可能な試験パッドにおいても、可変で精密に定義可能な角度で横方向に移動することもできます。関連する試験座標はCADデータに基づいて計算され、位置決めに利用されます。微小な試験パッドにも到達するために、3軸すべてにおいて、非常に正確な位置決めが行われます。その結果、DINコネクタ、VHDMもしくはHMZDコネクタ、およびDIPコネクタとの信頼性の高い接触が可能です。X軸とY軸上の精度は±10µm、Z軸上では±100μmです。この位置決め精度を保証するために、フライング・プローブの軸上で使用される駆動システムは高い要求に適合させる必要があります。たとえば、駆動システムが逆戻りすることなく動作することが望ましく、また移動システム内の操作には、軽量でありながら比較的高い動力を供給する駆動装置が求められます。最終的には、フライング・プローブは毎秒最大12回の試験を行えるように設計されます。同社のアプリケーションに求められるその他の重要な要件は、試験システムが円滑に動作するためのメンテナンスフリーの動作、長い耐用年数、および簡単な保守点検です。

フライング・プローブ用の駆動装置-小型、軽量でパワフル

Scorpion Technologies社は最終的に、マイクロモータの専門企業であるFAULHABERが提供する標準製品から駆動ソリューションを選択して決定しました。各可動試験プローブの3軸には1628シリーズのブラシレス・DCサーボモータが搭載されています。ローターのレアアース・マグネットとFAULHABERのスクリュー巻き線により、比較的少ないスペースで高い動的応答と出力を提供します。この装置内で使用するモータの特性は最高回転速度40,000rpm、出力は11W、トルクは2.6mNmであり、サイズは直径16mm、長さはわずか28mm、重さはたったの約30gです。
精巧に積層されたコアは、ステーター内の渦電流による損失を最小限に抑えます。したがって、モータの効率は比較的高く、約70%です。また、そのモータはほとんど摩耗せずに動作します。その耐用年数は、使われているボール・ベアリングと電子部品の耐用年数によってのみ制限されます。モータがデータ・シートで推奨されている数値で使用されるならば、平均寿命は10,000時間を超えることが予想されます。アプリケーションで求められる低速回転はモータ軸に取り付けられたスピンドルにより提供されます。

多機能バックプレーン試験システムであり、高速で精密な試験を実施できます。
試験は上面と下面の両面で実施できます。

設置面積の小さな磁気式エンコーダ

精密な位置決めにとって必須要件はモータの実際の位置を知ることです。この場合でも、メーカーの「モジュール・セット」が完璧なソリューションを提供しました。Flying Scorpionで使用されている軸の位置決めシステムにおいて、現在位置は、各モータに搭載されている1回転あたり256パルスの磁気式エンコーダによって検出されます。
磁気式エンコーダはローターに取り付けられた周期性を持った歯構造の磁気リングと磁気信号を処理する集積回路で構成されています。磁気センサが組み込まれた集積回路は、歯先と歯底の磁場差を処理し電気信号に変換します。出力信号は位相が90度ずれた2つの矩形波パルスからなり、この信号をフライング・プローブのシステム制御部によって処理されます。
シンプルな設計の堅牢な磁気式エンコーダは非常にコンパクトであり、モータに直接取り付けることができます。これらエンコーダはモータ・シャフトの自由端に取り付けられ、3本のねじで固定されます。モータの全長はエンコーダを取り付けても約10mm長くなるだけです。上記の用途において磁気式エンコーダとモータ間は共通のリボン・ケーブルで接続されており、電気的な接続は大幅に簡素化されます。機械的な組み立ても簡単で実用的です。
作業は、3本のねじでモータとシャフトに取り付けるだけです。
FAULHABERのモーションコントロール技術は、高精度かつ高速なフライング・プローブを用いる新しい試験システムおいて重要なコンポーネントです。